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透明フェロモン(6)

 しばらくの間は、それぞれに他愛もない話をしていたが、話の種が尽きて、すっと静かになると遠くで汽笛が聴こえた。海の側にいることを思い出した。カノンさんが私に向かって話し掛けた。

「ミチヒロがあなたと私、似てるって言うからお会いできるのを楽しみにしてたのよ。みなさんがおっしゃる程、私たち似ているのかしら。田上さん、あなたはどう思われますか?」

 教え子と楽しげに微笑むカノンさんは、お酒のせいか、薄紅色に頬を染めてそう言った。
 私とは似ても似つかない、とそのときは思っていた。確かに、二重の目や顔の輪郭に対して大きすぎる口は、よく見ると似てはいたけれど、カノンさんの黒くて長い髪と、私の赤茶けて短い髪は似ても似つかなかったし、それよりも、全体の雰囲気が違っていた。カノンさんは、穏やかな華のある才媛。私は、世の中を知らないただの若い女。彼女の前ではただ、惨めだった。それでも、そんな彼女に似ていると言われるのは悪い気持ちはしなかった。
 ふと、ミチヒロさんを見ると、ほらね、僕が今夜君をここへ呼んだ意味分かった?とでもいいたげな顔つきで、女性達の話し声にほくそえんでいた。

「そんなに似てるとは思わないですけど、そんなにみなさんに言われると、似ているような気にもなってきますね・・・、
お母さん、とでも呼ばせていただきましょうか。」

「まあ。私は子供生んだことないのよ、お母さんだなんて、違和感あるわ。」

とカノンさんは私の冗談に真顔で困惑して言った。

「でも、『ママハハ』のお継母さんだったら、現実味あるんじゃないの。カノンさん。」
「そうよ、カノンさんの黒髪と継母のイメージはぴったりね。」
「なに、それ、どういう意味。」
「魔女。」
「魔女?」
「魅惑の魔女。」
「そう、毒入りの、りんごで。」
「それって『ママハハ』の魔女だったっけ。」
「違った?それより、カノンさんの場合は、毒入りの透明なフェロモンで、かしら」
「もやもやっとした、見えない毒の触手で男を捕らえて一撃、なんて・・・ねぇ、旦那さん。」
女たちの会話で、突然話を振られたミチヒロさんは、困ったような顔をして、ビール片手に、
「そうね、毒でころっと。このありさまです。」
というと、みんながわっと盛り上がった。

 壁にかかった古い仕掛け時計が半分に開いて中から人形が出てくるとボロローンと午後10時の時を刻んだ。
 ミチヒロさん、カノンさん、初めて会う人たち。たくさんの人とこうして同じ時を過ごすのはいつ以来だろう、と記憶の奥を探っていた。
 その日から、私は、ミチヒロさんとカノンさんの家に滞在させてもらうことになった。どこの馬の骨とも分からない私を、ただ目と口がカノンさんのそれと似ているという理由だけで、二人は私を引きとめた。私も彼らと過ごすことを選んだ。その日から、私はカノンさんを「お継母さん」と呼び、カノンさんはいつからか「ユウちゃん」と呼ぶようになった。
 人のつながりとは不思議なものだ。決められているのか、私たちが決めるのか。ただ、つながるだけなのか、よく分からない。
透明フェロモン(7)
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/04/04(火) 18:41:58|
  2. 連載
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<透明フェロモン(7) | ホーム | 期待しすぎてがっくりきた話>>

コメント

こんにちは!

読ませていただきました!
スゴイ読みやすいです♪
話の流れに不思議な空気があって
続きが気になります。
また読みにきますね♪
  1. 2006/04/06(木) 14:50:12 |
  2. URL |
  3. KING MONKEY #-
  4. [ 編集]

KING MONKEY さんへ

ありがとうございます。すごくうれしいです。
自己満足な文章ですが、引き続き書いていきたいと思います。
私もKING MONKEY さんの「ガキの恋愛」読んでますよ。v-218
  1. 2006/04/06(木) 22:15:37 |
  2. URL |
  3. Neutron #-
  4. [ 編集]

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お立ち寄りいただきありがとうございます。
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まずは、とりあえず書いてみよう!と思い始めたブログです。
まだまだ未熟ですが・・・。



少しずつですが書き溜めてます。
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