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透明フェロモン(5)

 呼び鈴を鳴らしたのは午後6時過ぎだった。ミチヒロさんは駅まで迎えに来てくれるとは言っていたけれど、電話はしな かった。
 海辺の駅で降りるまで、電車の中では、今までの自分のことを考えていた。
 幼い頃は田舎で育った。近所の大人が道端で話すことと言ったら、誰さんの家の子供は今度何年生だ、とか、向かいの家に隣町から嫁いできた嫁はもうおめでただとか、そんなことばかりで、幼心にそんな田舎が大嫌いだった。
 できるだけ早く、家を出ようと考えていた。
 両親は田舎には珍しく教育熱心で、欲しい本があればどんなに高価でもすぐに買い与えた。
私は、優等生でいなければならなかった。
教育熱心な両親のため、近所の大人達の評判のため、そして、山々に囲まれて沈んだ集落を出て、
ぎらぎらした都会で自由を身にまとって生活するため。
地元の高校を卒業すると、念願叶って、進学のために大嫌いな田舎街を後にした。
 夢見た都会での生活は、夢のようにはいかなかった。何人かの男性と付き合い、一人とは同棲の真似事みたいなこともしたが、長くは続かなかった。・・・。


 「いらっしゃい。来てくれると思ってたよ。」
 そういうと、ミチヒロさんは、にっと笑うとどうぞ、といって家の中に招き入れた。玄関には、白かったり、赤かったり、とんがっていたり、丸かったりする靴が、礼儀正しく並んでいた。
「さぁ、中へどうぞ、遠慮しないで。妻を紹介しよう。」
 おじゃまします、といってぎこちなくスニーカーを脱いだ。
 ミチヒロさんの後について廊下の先にある部屋に入ると、着飾ったいくつもの目がいっせいにこちらを向いた。どぎまぎしていると、ミチヒロさんが、
「バスで知り合った田上さんをお連れしました。」
と、楽しげにおどけていって見せた。

「あら、噂どおりね。」
「まぁ、本当ね。」
「奥様をちょっとふっくらさせた感じかしら。」
「髪を伸ばせば、もっと似るんじゃない。」
「親子って言ってもばれないわよ。」
ご馳走を囲んで座っている数名の女性が、私を見てざわめいたのだった。
「田上さん、はじめまして、樋口カノンです。今夜は楽しんでいってね。」
カノンさんがそう言った。
透明フェロモン(6)
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/04/03(月) 23:51:54|
  2. 連載
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
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Neutron(ニュートロン)といいます。

お立ち寄りいただきありがとうございます。
小説を書くことで
自分の考えていることや考え方が
皆さんに届いて、共感していただいたり、
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と思っています。
まずは、とりあえず書いてみよう!と思い始めたブログです。
まだまだ未熟ですが・・・。



少しずつですが書き溜めてます。
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お題に沿って、65文字以内で場面を描写する練習をしています。悪戦苦闘中です。
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