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透明フェロモン(3)

「雨が降ってきましたね。」
「そうですね。」
「雨の音を聞くと昔を思い出します。」
男は少し座りなおしながら、そうもらした。
私は、雨の中の高速バスで、見ず知らずの中年の男の昔話を聞くのもどうしたものか、と考えのだが、拒む理由は見当たらなかった。
「昔って?」
「おそらく、あなたがこの世に生まれていないくらい昔です。僕たちは、ひどく貧乏で、屋根のあちこちから雨漏りする長屋の一室を借りて住んでいました。」
「僕たち?」
「そう。その頃は、今の妻と初めての二人暮しをしていました。『早く雨漏りしない家に引っ越したいね、海の見える家がいいね』、なんて言いながらね。そんなこと言っても雨漏りはひどくなるばかりでした。ひどい雨漏りを何とかしようとして、しかたなく、空き缶を置いてみたり、バケツを置いてみたりするんだけど、これが結構、味があってね。いろんな音がして、それだけでも楽しかったな、あの頃は。」
そう話すと、男は、懐かしいような視線をして、また、うれしそうに缶ビールを口に運んだ。
「それで?」
「それで・・・、続き聞きたいですか。」
どう答えてよいか考えていたら、
「ところで、お名前は何ておっしゃるのですか。差し支えなければ。」
と男が言った。一瞬戸惑うと、男は直ぐに
「いやならいいんですけど。僕は、樋口といいます。ほら、長旅でしょう。ここで会ったのも何かの縁だから。」
と言うと、黒のジャケットの内ポケットから、名刺を取り出すと、よろしく、といって慣れた手つきで差し出した。肩書きには、「代表取締役」と書いてあるのを見て、思わず
「あ、あの、私、名刺持っていないんです。すいません。田上優子と言います。」
とかしこまって言うと、男はまた缶ビールを持ち上げると、
「乾杯。今夜はおいしいビールをありがとう、えっと・・・、ユウちゃん。」
と、はにかんで、また微笑んだ。
気がついたら、バスが走り出してから2時間も経っていた。窓の外は暗く、遠くに街の明かりが霞んで見えた。

私はこうしてミチヒロさんと出会った。
透明フェロモン(4)
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/03/31(金) 11:32:51|
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  4. | コメント:0
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Author:Neutron
Neutron(ニュートロン)といいます。

お立ち寄りいただきありがとうございます。
小説を書くことで
自分の考えていることや考え方が
皆さんに届いて、共感していただいたり、
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と思っています。
まずは、とりあえず書いてみよう!と思い始めたブログです。
まだまだ未熟ですが・・・。



少しずつですが書き溜めてます。
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お題に沿って、65文字以内で場面を描写する練習をしています。悪戦苦闘中です。
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