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透明フェロモン(2)

「雨が降りそうですね。」
と、窓の外を眺めていたら、背後で声がした。夕暮れは、街を包みはじめ、車内のまばらに埋った座席にも、影を落とし始めていた。バスの窓から見える南の空は、どんよりとした分厚い雲で覆われ、そのせいか、乗車口から車内に入り込んでくる外の空気はこころもち重いように思われた。もうすぐ雨が降る。折角の旅立ちだというのに。
「雨が降りそうですね。」
同じ声が、また、聞こえた。さっきよりも小さく、独り言のようだった。振り返ると、品のいい黒のジャケットを羽織った中年の男性が、私のひざの上にあるコンビニの袋と私の顔を交互に見やりながら何か言いたそうに、ハンカチで軽く額の汗をぬぐっていた。高速バスに乗る前に、缶ビールを2本と缶酎ハイを2本、さきイカやらポテトチップスやらを買い込んだ。夜通し走るバス道中を徹底的にくつろいでやるというつもりだったのだ。
「そうですね。」
そっけなく答えてから、私は、袋から缶ビールを取り出した。「お待たせしました。」という運転手の車内放送と同時に、ぷしゅぅと音をたててドアが閉まり、バスは動き始めた。それと同時に私は手に握り締めた缶ビールを開けた。すると、隣からゴクリと喉が鳴る音が聞こえた。
「す、すいません・・・。」
男は、汗の引いた額をますますこまめにハンカチで拭うとそういった。恥ずかしいのか男の耳は、だんだん赤くなった。
「一本いかがですか。」
私がそういうと、待ってましたとばかりに
「え、いいんですか。ありがとう、乗り遅れるかと思って急いでたもんだから、飲み物買う暇なくて。ありがとう、いただきます。乾杯。」
そういうと、男はすぐさまプルタブを空けると、ぐびぐび飲み始めた。ますます耳が赤くなった。
「最高。」
と言うと、男は、心からうれしそうに私に微笑んだのだった。
しばらくして、予想通り雨が降り始めた。

透明フェロモン(3)
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/03/30(木) 23:07:51|
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Neutron(ニュートロン)といいます。

お立ち寄りいただきありがとうございます。
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まずは、とりあえず書いてみよう!と思い始めたブログです。
まだまだ未熟ですが・・・。



少しずつですが書き溜めてます。
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