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透明フェロモン(10)

 ミチヒロさんとカノンさんは子供がいないせいか、週に一度は、人を集めてパーティーを開いた。カノンさんの教室の生徒さんや、近所の奥さん方。料理はカノンさんと私が作る。

 ミチヒロさんは、キッチンまでやってきて、私たちにちょっかいを出したり、ウッドデッキで新聞を読んでいたかと思うと、また立ち上がり、玄関を掃き掃除し始めたりと、とにかくそわそわする。

 ミチヒロらしくないでしょう。とカノンさんは言った。人が集まるときはいつもあんな感じなのよ。

そして、「ユウちゃんありがとう、後は私がやるから。」とカノンさんはいうと、まだ落ち着かずにリビングをそわそわしているミチヒロさんを見てから、相手してやって、とでも言うように私に目配せをした。


「ミチヒロさん、今日はずいぶんそわそわしてるね。」
「そうかな、いつもこんな感じだけど。」
「いえ、いつもと違います。すごく。」
「そんなことないよ。」
「そう?」
「そう。・・・それにしても。」
「何?」
「今日は、雰囲気が違いますね。」
「ますます、カノンさん似ということ?」
「いえ、今日は『田上優子さん』オリジナルでしょう。ワンピース似合ってるよ。」

柄にもなく、くるりと回って、「それはありがとう、ミチヒロさん。」と言った。

ウッドデッキでの私たちのやり取りをキッチンから見ていたカノンさんがやってきて、
「演劇か何か?ふふふ。」
と楽しそうに笑った。

 
 夕方になると、一人二人、やってきて、7時ぐらいになって日も落ちると、沢山の人が集まった。
  そして、その日も同じように古い仕掛け時計の人形が午後10時を告げると、ぽつぽつと人々は帰っていき、にぎやかだったのが嘘のように、静まり返った。
 雨が、海に落ちる音が聞こえそうだった。

 「おやすみなさい、お継母さん、おやすみなさい、ミチヒロさん。」

と、酔いに任せて、またくるりと回って、早々と西向きの角部屋に切り上げたのだった。

 真夜中、喉がひりひり渇いて、目が覚めた。一瞬、どこにいるのか分からない。学生時代住んでいたアパートか、それとも、実家の私の部屋?、と自問自答して、ようやく、自分のいる場所が分かった。そうだ、カノンさんと、ミチヒロさんの家。私は、この西向きの角部屋を借りて滞在しているんだったっけ。

 ベッドから這い出して、水を飲むために部屋を出た。リビングを通ってキッチンの水道の蛇口を静かにひねった。午前2時10分。仕掛け時計の人形も眠っている。暗闇の中で、近くのコップを手探りで探し当て、水を汲み、一気に飲み干した。

 一息ついて落ち着くと、僅かに香水の香りがした。コップだ。
でも、いつものカノンさんの香りとは違った。嫌味のないいい香りだった。

 ぼうっとした頭で、ウッドデッキの方を眺めると、月明かりに照らされた二つの人影があった。
 昼間、私がミチヒロさんと演じたあたりに、二人の影が長く落ちていた。

 私は二つの影をじっと見つめていた。
 はじめは穏やかに、静かなダンスを踊るように揺らめいていた。
 しだいに揺れは大きくなって、最後は絡まりあって一つになった。
 そして、また静かになった。

 午前2時30分。面倒くさそうに人形がボーンと一つ鳴いた。

 私は何も見ていないつもりで部屋に戻り、何も見ていないつもりでベッドにもぐりこんで、波の音を聞いた。

 雨は上がったんだな、と思った。

 ミチヒロさん。とつぶやいた。そのあとに、コップの香水の香りを思い出して、また眠った。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/04/11(火) 01:30:17|
  2. 連載
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<透明フェロモン(11) | ホーム | K氏の森(3)>>

コメント

こんにちは!

コップの香水の香り…
続きが気になる終わり方ですね。
楽しみにしてますよ♪
  1. 2006/04/11(火) 18:28:54 |
  2. URL |
  3. KING MONKEY #-
  4. [ 編集]

KING MONKEYさん

ありがとうございます。
がんばります。
  1. 2006/04/12(水) 18:48:59 |
  2. URL |
  3. Neutron #-
  4. [ 編集]

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