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取材(3)

 時計を見ると午後6時。窓から甘辛い煮物の匂いのする夕暮れの風が吹き込んできた。私は、グラスに注がれた480円のワインをもう飲み干してしまった。
男の話が本当なのか、それとも、嘘なのか。私は、疑い始めていたのだが、男がレコーダーを止めてくれと言う度にそっと止めたふりをして録音し続けた。酔いがまわってきたせいかもしれないが、嘘でもいい、ワインを飲みな
がら、嘘か本当か分からないような話を聞くのもたまにはいいのかもしれない、と思い始めていた。

「それで、『おまえの人生は、私が設計している。』という赤いワンピースの女性は何者なんですか?それより、誰かが誰かの人生を設計しているなんて、そんなこと、今時、子供でも信じないですよ。」

「信じる信じないの問題じゃないんだよね。だって事実なんだから。確かに彼女は、僕の人生を設計していたんだから。」

男は、そういうと、古いテーブルの上のノートパソコンを開き、電源を入れると、言葉に詰まった私を見て、

「ノートパソコン使ったことある?」

ととぼけた口調で言った。がらんどうの部屋にノートパソコンのファンの回る音が際立って聞えた。
男はにやっと笑うと、また語り始めた。

つづく!
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/06/21(水) 19:15:34|
  2. 短編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

お金持ち特集 男の話(3)

「な、なんで知ってるの?僕が痔だってこと。」

「おまえの人生は、私が設計している。」

「はあ?」

「年収約500万の父親とピアノ教室を営む母親の元に生まれた次男。学生時代は勉強ができて優秀。高校時代に初めての彼女ができる。その彼女とは3ヶ月で別れる。初体験は大学時代、同じテニスサークルの女と。名前は、真由美。この恋も長続きせず、結局彼女の浮気が原因で半年で終わる。大学卒業後、大手食品企業に就職、目立った業績はなく、10年で退社。現在、失業保険で生活中。痔になる。10年後、痔、癌化。5年後に癌細胞がリンパに転移し、死亡。享年47歳。」

女は淀みなく、何かを読み上げるように言って僕を見た。

「は、ははは、面白いことを言う人だな。47歳で死ぬって?えらい早死にじゃないか。そんなこと信じるとでも思うわけ?」

 僕は正直、驚いたよ。ありえないと思いつつも、額に冷たい汗が滲み出るのを感じた。
女の言うことは、少なからず当てはまっていた。僕のこれまでの人生に。

「ど、どこで、どう調べたか知らないけど・・・。こんな僕を調べてどうする。何のとりえもない男だ。何が目的なんだ?」

「まだ分からないのか。愚かな男だ。それも仕方ない、そう、設計したのも私だ。」

「それに、初体験の相手は真由美じゃない。真由美とはそういう関係じゃない。」
僕は、Tシャツの袖で額から落ちる汗を拭った。

「名前の違いは、わずかなぶれにしかすぎない。設計上、たいした違いはない。」

「大きな違いだ!真由美は僕の幼馴染で親友だ。僕らにはセックスなんて必要ない。お互い、ただ側にいるだけで分かり合える。大切な存在だ。男女の枠を超えてね。今日会ったばかりの君に何がわかるっていうんだ。」

「今日会ったばかりなのに、おまえはもう、私の赤いワンピースを脱がして、抱こうとしたじゃないか。おまえのがらんどうの家で。おまえは、真由美を抱いた。何度も何度も繰り返し繰り返し。ベッドの上に裸で横たわる真由美をおまえは縛り上げて、真由美のあえぎ声に興奮したじゃないか。」

「現実じゃない!想像じゃないか!想像して何が悪い!」

「誰が悪いと言った?悪いと思っているのはおまえだろ?想像?空想?大いに結構。おまえの人生が豊かになるように、優れた想像力を付加しておいて良かっただろう?感謝したまえ。親友、親友と叫びながら、頭の中で何度も真由美を犯すがいい。」

僕の中にある硬い殻に包んで鍵をして大切にしまってあるものを、白昼の下に晒されたようで、居たたまれなかった。

古い記憶。大学時代のテニスサークルの部室だ。僕と真由美がいる。
―誰にも言わないって約束してくれる?
―どうした?何かあったの?
―あたしたち、親友だよね?信用しているから言うけど、誰にも言わないでよ?
―なんだよ。
―あたし、この前、柴田先輩とラブホテルに行ったの。
―はあ?そんなこと俺に言ってどうするの。
―・・・、だって親友じゃん。
―・・・そうだけど、別にそんなこと言わなくていいだろ。
―そうかな。
―そうだよ。
―あたし、柴田先輩のこと、マジで好きになった。
―そんなこと、俺に言わないで、本人に言えよ。
―そうだね、変なこと言ってごめん。

変に胸の奥が疼く感覚。僕は真由美に恋をしていたのだろうか。

「お二人様で5880円になります。」
とレジで店員が言うと、女が6000円を払って20円を受け取り、僕らは何事もなかったようにホテルを出た。
 外に出て空を見上げると太陽がぎらぎら照りつけて、僕は目の前がぐらぐらした。
コンクリートがサンダルのない方の足の裏をじりじりと焼いた。


つづきはこちら→取材(3)

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/06/10(土) 13:09:53|
  2. 短編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

お金持ち特集 男の話(2)

 図書館を出てから、5分ほど歩いて女が向かった先は、高級ホテルだった。自動ドアに吸い込まれるように入っていく女の背後で、僕は、一度立ち止まった。だって、サンダルに半ズボンにTシャツというラフな恰好だったから。ドアマンが僕をじろじろ見ていたよ。こいつまさかその恰好でこのホテルに泊まる気か?、という顔つきで。
 どうやら女は僕がついて来ないことに気づいたらしく、吸い込まれた自動ドアから戻ってきて、うろうろする僕の腕をつかんだ。すごい力だったよ、女とは思えないくらい。僕は女に引きずられるようにして高級ホテルの中に入った。ドアマンも丸い目をして、引きずられる僕と、真っ赤なワンピースの女を見比べていた。ちょうどそのとき、無理やり女が引っ張るものだからサンダルが脱げてね。片足は裸足、片足サンダルという、どうみても高級ホテルにはそぐわない恰好だった。ベルボーイやフロントマンはそろって、女に引きずられる僕を見て、なにごとだ!?という顔をした。その後で、女を見ると、理解したような納得したような顔になって、注意すらしなかったのだよ。・・・。
 そして女と僕は、1階にあるレストランに入った。
入り口には、ケーキバイキング、お一人様2940円で1時間半食べ放題、と看板が出ていた。

「遠慮しないでいい。食え。」
女は、皿山盛りにケーキを取ってきて、戸惑いながら座る僕の前に、何皿も何皿も置いた。
「あ、ありがとう。」
と僕が言い終らないうちに、女は次から次へとケーキを手づかみで口に運んだ。
 ショートケーキ、チョコレートケーキ、シュークリーム、モンブラン、苺のミルフィーユ、抹茶色のロールケーキ、チーズケーキ、かぼちゃのムース、レーズン入りのバウンドケーキ、洋ナシのババロア、プリンアラモード、・・・。
 見る見るうちに女の口の周りは、生クリームやらカスタードクリーム、スポンジの細かくいの、プリンの断片やらで汚れていった。勢いは止まらない。飲み物も飲ない。飲み込んでいる。
「うまい、、うま、い、おま、えも、く、え。」
僕は、見る見るうちに女に吸い込まれていくケーキと、クリームで汚れた女の顔を見ていた。僕は、ケーキを一つ食べ終わらないうちに腹がいっぱいになった。しかし、まあ、いくらケーキを食べても女に何の変化もないのには驚いたね。女は始めのペースを維持したまま、1時間半、店員に、「お客様、お時間です。」と言われるまで食べ続けたんだ。
 店員の言葉を聞いて、赤いワンピースの女は、さっきまでの勢いが嘘のように静かに居直って、ナプキンで汚れた口の周りを拭うと、背筋をピンとのばして、初めて紅茶を飲んだ。僕はサンダルのない方の足で女のすねをつついた。まるで僕なんて忘れているみたいだったからね。女は僕に今始めて気づいたみたいに驚いて、
「あ。」
と小さく叫んだ。
「おいしかった?」
と聞くと、
「おいしいか、おいしくないかはたいした問題ではない。私の中の虚無は決して満たされない、ということを確認しただけだ。」
と哲学者のような口調で言った。目の前に僕がいるのを忘れるほど夢中で貪り食べていたくせに、なんだか訳のわからないことを言うから、少し笑ってしまったね。


・・・。ちょっといいかい、ここから、レコーダー止めてくれるかな。
止めた?本当だろうね。ここからは、オフレコでお願いするよ。


 笑う僕をよそ目に、女はさらに紅茶をすすって、
「お前の痔は、後10年で癌化する。」
と当たり前の事実のように言いのけたんだ。
僕は何も言っていないのに。
痔のことなんて。


つづきはこちら→男の話(3)

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/06/05(月) 22:24:11|
  2. 短編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

お金持ち特集 取材(2)

「それで、その女性とあなたがお金持ちになったことに何か関係があるのですね?」
と私は尋ねた。男の自宅に着いたのが午後4時だから、もう、1時間が経とうとしている。
目の前のソファーに足を組んで深く座っているのっぺり顔のこの男が、金持ちだなんてまだ信じられない。
もともと、企画部の情報通から、この男を紹介されたのだ。ちょっと変わった仕事で儲けてる金持ちがいるんだけど、取材に行ってみないか、と。
 男は、ワインをまた一口すすると、足を組替えて
「まあ、そう、焦りなさんな。」
と、どこからもってきたのか空のワイングラスをテーブルの上に置くと、
「仕事中ですので、とか、かたいこと言わないで、一杯どうぞ。480円だけどね。」
 そう言いながら静かに注いだ。
 会社に、取材が長引きそうなので、今日は直帰します、と電話を入れてから、男の前に戻り、
「・・・では、お言葉に甘えて、」
ワイングラスを口に運んで、わずかに唇を潤した。
480円とは思えなかった。夏の早朝の湿気、しかし消して重苦しくない湿り気、に包まれるような気分になった。
「おいしいでしょう。」
と相変わらずのっぺりした顔で男が言った。私は無言でうなずいた。

つづきはこちら→男の話(2)

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/06/04(日) 01:43:10|
  2. 短編
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お金持ち特集 男の話(1)

今から一年ぐらい前だったかな。僕は調べ物をするために近所の図書館に出かけたんだ。ちょっと、医学書をね。病院に行く前に、調べておこうと思って。・・・病気?何の病気かって?

えっと・・・、その前に・・・。レコーダー止めてもらえるかな。

・・・止めた?よろしい。



痔。



・・・。

さすがにね。いきなり病院に行って医者に尻の穴覗かれるのもなあ、って思ってね。・・・予備知識を入れておこうと思って。医学書って言っても専門書じゃなくて、家庭の医学とか、そっち系。どんな診察されるのか。それより、果たして本当に痔なのか。痔と思っていたら大腸がんだった、なんて話、よく聞くだろ?そう、心配だったんだよね。・・・。
よし、いいだろう、再開してくれ。

どれくらい調べていただろうか。3冊目か4冊目か。どの医学書も同じようなことが書かれていた。すぐに医者に行け。そりゃそうだよなあ。
なんだか急に納得して、今すぐ医者に行こうかって気分になって、本を元の位置に戻して隣を見ると、それまで気がつかなかったんだけど、真っ赤なワンピースを着た若い女が立っていたんだ。平日の午後の図書館にはそぐわないような端整な顔立ち。女も医学書を調べていた。医学書を持つ腕にはダイヤが連なったブレスレット。胸元は大きく開いていて同じデザインのネックレスが光っていた。
僕は咄嗟に思った。
今日は、ついている、医者には行かない、って。
どうして?って?そりゃ、男だったら誰でもそう思うんじゃない?
僕はもう少し、女の横に立っていようと思って、4冊目か5冊目の医学書を手にしたんだ。「Cancer Medicine」とか言う真っ赤な表紙の洋書だった。もちろん英語なんて読めやしない。読んでるふりをしてたんだよ。

英文の行間に浮かんでくるのは、がらんとした僕の家に彼女がいる光景。彼女は僕を見つめると、くねくねしながら真っ赤なワンピースを少しずつ脱いでいく。
「ねぇ、・・・抱いて。」
湿った声で僕の耳元にささやいて、僕のTシャツのすそから手を差し入れて胸骨にそって指を這わせる。彼女の厚い唇が僕の唇に重なって・・・。

変態?
想像するのは僕の自由じゃないか。第一、僕は、虚構と現実の区別がつかないような人間じゃない。それに、僕の頭の中の女は、現実に隣に立っている女より、肉づきが良く、背も低い。どちらかと言えば、隣にいる女よりも、より現実的な肉感がある。彼女と似ているとはいえ、別人なんだよ。

 そうはいっても、女を気にせずにはいられなかったのは事実だ。ちらっと女を盗み見ると・・・。
 目が合った。
女も僕を見ていた。
手に汗が滲んできて、「Cancer Medicine」の表紙が粘りついた。ふくらはぎがかすかに痙攣した。結構な時間立ち読みしていたからにちがいない、と心の中でつぶやいた。
女は僕を見上げると、
「おまえ、エロい想像してただろ。」
と静かな声で言った。
「と、とんでもない。」
という僕の言葉を聞かないうちに、一度、貸し出し受付カウンター行くと直ぐ戻ってきて、
「ついてこい。」
と投げつけて、腰をくねらせながら図書館を出て行った。僕は急いで女の立てるヒールの音を追った。
慌てて外に出ると、女は満足げに煙草を吸っていた。
その煙がね、バニラの香がしたんだ。
そんな煙草しってる?僕は煙草を吸わないから分からないんだけど。・・・。


つづきはこちら→取材(2)

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  1. 2006/06/03(土) 21:59:08|
  2. 短編
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プロフィール

Neutron

Author:Neutron
Neutron(ニュートロン)といいます。

お立ち寄りいただきありがとうございます。
小説を書くことで
自分の考えていることや考え方が
皆さんに届いて、共感していただいたり、
感じ取ってもらえる様な作品を書ける様になりたい!
と思っています。
まずは、とりあえず書いてみよう!と思い始めたブログです。
まだまだ未熟ですが・・・。



少しずつですが書き溜めてます。
倉庫目次

お題に沿って、65文字以内で場面を描写する練習をしています。悪戦苦闘中です。
修行目次
未熟者ですがどうぞよろしくお願いします。

※エロ系トラックバックは即効削除します。
お互い労力の無駄です。張らないでください。



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